2012年2月12日日曜日

今度こそ相撲改革、北の潮親方

30日、任期2年満了による日本相撲協会の理事選挙が行なわれ、その後の理事会で、満場一致で北の潮親方(58)(元横綱 本名・小畑敏満)が第12代の理事長に選ばれた。

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北の潮親方が、理事長在任中、2007年7月、時津風部屋で兄弟子や親方による集団リンチで序の口力士が死亡。この傷害事件で、元双津竜(前時津風親方)は愛知県警に傷害致死で逮捕された。

2008年9月、ロシア力士の大麻事件が世間の耳目を集めたなかで、事件の対応が批判の対象になった。責任者としての統治能力、自覚が乏しいと、理事長の座を追われるように辞任した。

継いだ武蔵川親方(元横綱三重ノ海)は、20105月に端を発した大相撲野球賭博問題で辞任、元東京高検検事長の村山弘義氏が代行、放駒親方(元大関魁傑)が理事長を継いで、今回の改選になった。この間に、何らかの改革の芽は生まれたのだろうか。表面的には何ら変わったようには見えない。

北の潮親方は、理事長辞任後も、、2011年4月には、弟子が八百長事件に関与したことを受けて、理事から役員待遇委員に降格した。

脛に傷だらけ、引責辞任が喉元を過ぎてもいない元理事長の北の潮親方だ。そのお方が、今回、理事長として再登板したというのだ。憤飯と言えば、叱られるかな。

現行の制度では、協会運営の人材不足はしょうがないのだろう。現役時代の最年少の21歳2ヶ月で横綱になったこと、幕内で最高優勝24回の成績が、投票する者にトラウマになってはいないだろうか。力士として残した成績は、他を圧倒するものがある。

再登板となった北の潮新理事長は、神妙な顔で記者会見を行なっていたが、果たして、相撲改革にきちんと取り組めるだけの統治能力が発揮できるのだろうか、その表情を窺いながら、不安を感じた。

先ず迫っているのが、日本相撲協会を公益法人へ移行するために年寄名跡(親方株)をどうするかといった問題だ。

問題が余りにも多くて、今後の改革には、相撲社会どっぷりの人たちだけでは、どうにもナランと思う。所管の文部科学省、知識人が加わった何とか委員会を発足して、組織を一旦、全てを壊わさないと、アカンのではないか。組織や運営方法の改編、親方株などに象徴される従来からの制度の見直しについて、下の新聞記事はヒントを与えていると思ったので、ここに転載、引用させてもらった。

日本相撲協会の「ガヴァナンスの整備に関する独立委員会」副座長の慶応大学教授・中島隆信氏が、20120207の日経新聞・33面「スポートピア」で指摘している問題点の、今後の行く末を見守りたい。

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八百長を擁護するわけではないが、そもそも大相撲の魅力は白黒つけがたい「曖昧さ」にあると考えている。たとえば、力士のランキングを表する番付は、テニスやゴルフのようにはっきりした算定基準がない。

他競技に先駆けて導入したことで有名なビデオ判定もその一つだ。普通ならば勝ち負けがより明確化するはずなのに、物言いがついてビデオを参考に協議した結果、しばしば「同体とみて取り直し」となる。野球ならばフェアかファールか微妙なので「投げ直し」を命じるということだ。立ち合いにしても、陸上競技のようにスターターピストルが鳴るわけではない。両力士が呼吸を合わせて自発的に立ち上がり、初めて競技がスタートするのである。

こうした曖昧さは他のスポーツにはなく、文化的色彩の強い相撲ならではの魅力ともいえる。

しかし、望ましくない曖昧さもある。相撲部屋の師匠が勝負審判を兼ねているのはどうだろうか。監督やコーチが自分のチームの試合で審判を務めているようなもので、真剣勝負に対する公平な裁きが担保されているとは到底思えない。審判部の専権事項である番付編成は、審判員が自分の弟子に有利になるように昇降を決めているのではと疑われても致し方あるまい。

組織運営を見ても、協会の理事と師匠の兼務には問題がある。これまでの数々の不祥事は、協会による相撲部屋へのガヴァナンスが甘かったことが根本的な原因だ。率先して改善に取り組むべきなのに、今回も協会は相も変わらず従来通りの方式で理事選挙を実施した。

大相撲の良き曖昧さを文化的価値として認めてもらうためにも、あしき曖昧さを改善していく知恵が協会に求められている。