毎朝、配られてくる朝日新聞の天声人語を、コーヒーを飲みながら読むのが、朝一番の私の楽しみだ。
文章の巧さには私ほどの者が言うことはない。いつも感心させられるのだが、何よりも嬉しいのは、今の世の中での出来事を、本紙の他の記事とは切り口を代えての論評、ウイットを混(ま)ぜての文章は、非常に勉強の材料になっている。中学生からのお付き合いだ。
さて、今朝の記事は、各所で各人が含蓄のある話をされたことをまとめたものになっている。こんな1話、1話もやはりマイポケットに仕舞い込みたい。
そういうことで、20120229の天声人語を下にそのまま転載させてもらった。
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冷え込む閏日(うるうび)は、春の到来を1日遅らせるいたずらっ子のようだ。7月には閨秒もあり、今年は平年より1日と1秒長い。長い余韻を引く2月の言葉から。
ローザンヌ国際バレエコンクールで優勝した菅井円加(まどか)さん(17)がねだったのは、母賀子(よしこ)さん(48)の手料理だった。娘にバレエを勧めたその人は「親はドアを開くだけ。あとは本人が道を選択して最後に『よかった』と思ってくれれば」。
郵便不正事件で無罪の村木厚子さん。国が払った賠償金の約3千万円を、刑務所を出た知的障害者を支援する社会福祉法人に寄付する。「お金欲しくて提訴したのではない。税金は最も光が当たりにくい人々のために」と。
土下座ブームらしい。漫画「どげせん」を企画した板垣恵介さんは、土下座は相手を追い詰める「暴力」だと言う。被災地の東電社長がいい例だが、「土下座しなきゃならない状況は大抵、土下座では解決できません」。
〈首都直下型地震、4年以内に70%」の報道に、木造が密集する荒川区の西川太一郎区長が語った。「多くは『嫌だなあ』と思っただけかもしれないが、『何かしなければ』と思った人もいるはず。その割合が無事な数を決める」。
「森は海の恋人」の運動で知られる宮城県気仙沼市のカキ漁師、畠山重篤(しげあつ)さん(68)は「三陸で暮らす養殖業者は壊滅する宿命を背負っている」と話す。それでも続けるのは「この海が好きだからです。魚がとれるからだけではなく、空気とか風景とか、潮の香りだとか」。