2012年5月15日火曜日

金権球団、読売ジャイアンツ

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巨人軍は常に紳士たれ。これは、巨人軍の創設者の故・正力松太郎の遺訓だ。

「報道」は、社会的に大きな力を持っており、「立法」、「行政」、「司法」の3つの権力に加えて、第四の権力と呼ばれる。

今回の話題は、読売ジャイアンツ(以下、巨人軍と表記する)のことを朝日新聞が報じたことから始まる。今回ばかりは看過するわけにはいかない。何故なら、巨人軍の親会社が、報道に携わる読売新聞社だからだ。朝日新聞社だって、力が入る。

今回の件で、読売新聞社の第四の権力=報道の有態(ありてい)も問われている。

読売新聞社は逃げたり、避けたり、誤魔化さないで、堂々と報道機関として、白黒をつけて欲しい。日本を代表する報道機関2社のやりとりを見極めたいと楽しみにしていたら、読売新聞社は朝日新聞社宛に、こちょこちょ質問状を送るだけで、報道機関としての「論説」がない。

第四の権力の一翼を担う読売新聞社は、親会社として子会社・球団の実態を、内輪の取材で、どこまで深耕した記事を書けるだろうか、お手並み拝見だ。

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事の始まりは、新聞からだった。

以下は、20120315、16両日の朝日新聞の記事(細字の部分)を使って、文章を綴った。

朝日新聞は、15日の1面で「巨人、6選手に高額契約金」、「球界申し合わせ超過」、「07~04年、計27億円分」、社会面では「巨人破格の契約金」「複数年に分け支払い」「上原・二岡両選手の覚書判明」「球団に聞いて、何もありません 6選手」「逆指名で競争激化背景」の見出しだ。

巨人軍は、球界が申し合わせた契約金の最高標準額(1億円と出来高払い5千万円)を超える契約を6選手と結んでいたことが明らかになった。

契約金は此の通りだ。阿部慎之助 10億円/野間口貴彦 7億円/高橋由伸 6億5千万円/上原浩冶 5億+功労金1億2千万円/二岡智宏 6億+功労金7千万円+別の出来高3千万円/内海哲也 2億5千万円。巨人軍にとって、これらの契約金額が、「目安」だったのだろうか。この目安は余りにも、破格の金額だ。一度も、プロの世界で打席やマウンドに立ったこともないない選手をよくも、ここまで値踏みしたものだ。

かって、西武や横浜が、選手に最高標準額を超える契約金を支払っていたことが、2007年に明らかになったとき、読売新聞社は、子会社の巨人軍のことに触れることなく、他球団を「ルールを逸脱する行為」と報じていた。厚かましい限りだ。

巨人側は「標準額は2007年までは上限ではなく、超えても構わないというのがプロ野球全体の理解。ルール違反ではない、とコメントして平気の平左衛門。ところが、04年にドラフトで横浜が日大から自由獲得枠で獲得した那須野投手に5億3千万を支払ったことが発覚した。球団にはNPBから厳重注意処分が出され、球団内部の処分として、当時の社長や専務の降格が決まった。那須野は野球フアンの批判を浴び、実力を発揮できず、球界を去った。

07年前だって、この那須野投手はこのように批判を浴びたのだから、巨人軍の6選手も同じように非難されるべきだ。だが、彼らは口を閉じたまま。巨人軍も然りだ。

 

翌日の16日の1面で「巨人、入団前に現金」、「04年野間口選手へ200万円」、社会面では「巨人苦しい言い訳」「識者 隠蔽体質指摘も」「二岡選手在学時 大学監督に謝礼約束か 巨人、委託料2000万円」「巨人=金銭支出ない」の見出し。

両日とも1面の頭で、社会面では一番大きく取り上げた。余程のことだ。私の興味はますます盛り上がった。

04年には、巨人、阪神、横浜から明治大の一場靖弘投手への金銭授受が発覚して、3球団の社長は責任をとって辞任した。

07年には、それ以前に西武がアマチュア選手に金品を供与していることが発覚し、社会問題になった。球団創設以来170人に金銭を供与したと発表したが、その氏名は公表されず、うみを出し切ることはできなかった。この不正をきっかけに希望入団枠はなくなった。

04年、巨人軍は野間口選手にアマ時代から金銭を渡していたことを認めた。一昨年(10年)は沢村選手の1本釣りに成功し、昨年(11年)も菅野投手の単独指名を確信していた。巨人の囲い込みが顕著だ。巨人軍の社長が、此の件について記者から説明を求められ、小遣い感覚で渡していた、というようなことを述べていた。狂っている、この球団は、断じて狂っている。栄養費だと言っていた球団もあった。

 

●契約金最高標準額とは=新人選手の契約金についてのプロ12球団の申し合わせ事項。社会人と大学の選手が入団する球団を選べる「逆指名制度」が始まった1993年秋のドラフト会議で「1億円」とされ、翌94年からは「5千万円までの出来高払い」も加えられた。野球協約では触れられておらず、超過に対する罰則はない。

ただ、07年に西武で最高標準額を超える契約が発覚した際、当時の根来泰周コミッショナー代行は「申し合わせに反するとして制裁を科すことは適当ではないが、野球協約第194条にいう「野球を不朽の国技とし、利益ある産業する目的」に抵触する疑いがあるというべきで、厳重に注意する」との通知を出した。

逆指名制度は01年から自由獲得枠、05年から希望入団枠と名称を変え97年に廃止されたが、申し合わせは今も変わっていない。

●プロ球団による学生や社会人への金品供与=日本学生野球憲章は、高校生や大学生の野球部員がプロ側から「栄養費」などの名目で金品を受け取ることを禁止している。

社会人野球では明文化されていないが、日本野球連盟によると、これらの行為は「基本理念と活動指針」の「社会人としてのコンプライアンスを順守する」との定めに反するとして処分を出してきた。

2007年には、西武ライオンズが東京ガスの選手に金銭を供与していたことが発覚し、連盟はこの選手を1年間の謹慎処分にした。また、東京ガスが連盟への報告を怠ったのは、寄付行為の「連盟の名誉を傷つける行為」にあたるとして、約2ヶ月間の公式戦出場禁止の処分となった。

 

朝日新聞社としては、ちょっとこの手の内容にしては、当初、取り扱いが大げさ過ぎないかと思ったが、かねがね、姑息な手段を使う球団のこと、事の推移を楽しみにしていた。スポーツマンを小馬鹿に、野球ファンを何度も失望させてきた球団だ。

巨人軍のヤバイ部分を朝日新聞が取り上げたことに、我が意を得たりの感ありだ。巨人軍の闇の行為が露見したからといって、取り立てて奇異に感じなくなったのは、ちょっと悲しい。

この際、言いたいことを言わせて貰おう。

巨人軍がやったことには、コミッショナーは一向に動こうとしない。

今は、上限金額を定め、超えたらコミッショナーの制裁対象になっている。2007年の西武の裏金と横浜ベイスターズが04年に那須野選手と5億3千万円の契約をしたことが明らかになったとき、元コミッショナーは日本プロ野球協約194条に抵触すると言って、厳重に注意した。今回の件も、明らかになったら、当然厳重処分の対象になるのではないか。現コミッショナーは、この朝日新聞が報じた内容の真否を調査して、その是非をはっきりコメントすべきだ。ところが、今のところ、何の行動も起こそうとはしていない。

根木泰周・元コミッショナーは、巨人贔屓で、巨人に物申せない仁だったけれど、現・加藤良三コミッショナーは、どうなんですか?良識あるお人なのですか、それとも最早、巨人に接待漬けされて思考能力不全になってしまった?それはそれで納得しますよ、よくあることですから。

それでは、日本プロ野球協約の第194条とは=コミッショナーは野球を不朽の国技とし、利益ある産業とする目的を阻害するすべての行為については、この協約に明文上の定めがない場合であっても、これを制裁し、あるいは適当な強制措置をとることができる。

そして後日、巨人軍が朝日新聞社に送付した質問状に対して、朝日新聞社は巨人軍に、「当該記事は、プロ野球界が新人契約金の高騰を避ける目的で最高標準額を申し合わせたにもかかわらず、貴球団と新人選手の間において、この額を大幅に上回る高額の契約が複数あったことを報じたものです」と伝えた、と朝日新聞20120320にあった。

この新聞記事のままの朝日新聞社からの返答に対して、読売新聞社と巨人軍は、きちんとコメントすべきだ。

そして、25日には、社会面で「巨人に国税が見直し指導」、「04年 出来高払いも契約金」の見出し。新人契約金の最高標準額を超えた額を、各年の出来高払いとして費用計上していたが、国税側は、新人契約金の一部として費用計上するように指導した、との記事が掲載された。

繰り返す、日本を代表する読売新聞社には「第四権力の報道」としての「論説」を、コミッショナーにも見解を求める。