こんなに仲良くなった銀杏のことを、思いつきのまま書き溜めておく。
銀杏は私にとって、下世話にいう艶(つや)やかな食べ物だ。銀杏を見ると、下品そのもの、イヤラシイ顔になってつい喜んでしまうのだ。銀杏を食うと、男としての精がつくと聞かされていたからだ。
今でも、串刺しなどの酒の肴として、時には茶碗蒸しに入ったものをいただく度に、そんなことを考えてしまう。
でもその根拠を求めて、何千冊も本を読んだり、何万人にも聞いた訳ではないが、どうしてもその理由を知る機会を未だに得られていない。
経営責任者の中さんが、どうも、そのことはこういうことのようですよ、と話したのは、銀杏が直接男性の性的エネルギーを生むのではなく、血行をよくすることで男性機能を高めて結果的に性欲を増すということらしいですよ、と。昔、中国の皇帝はいっぱい銀杏を食って、子宝に恵まれるように努力をなさった。毎夜、10~15粒食っているが、確かに血行がよくなることは実感している。鼻血ブーとまではいかないが。
それでは、ちょっと俗っぽい世界から普段の生活に戻ります。
イチョウの木に生った実の中の、果肉に包まれた種子のことを、我々は銀杏(ぎんなん)と美しい字を並べて呼ぶ。銀杏をイチョウと読むこともある。この銀杏を焼いて、焙って、殻を破って食する部分は、仁だ。
中高生時代に習った履修科目・「生物」の復習をしよう。植物は種子植物と胞子植物に大別する。そして種子植物には被子植物と裸子植物だ。イチョウは、裸子植物門でイチョウ鋼、この鋼でイチョウは唯一現存している種らしい。
中国原産で、落葉高木。針葉樹でも広葉樹でもない。このイチョウ、広い道路での街路樹は結構だが、狭い道路の街路樹はいただけません。イチョウには何の罪もないことだが、街路樹の選定には今さらながら気を遣って欲しいと思う。
雄株と雌株がある雌雄異株で、実は雌株にしか生らない。実が生るためには雄株の花粉が雌株の雌花に受粉しなければならないが、雄株の花粉は1キロ程度まで飛散するので、雌雄の株は直近に揃ってなくてもいいらしい。近からず、遠からずの賢明なやりかたを、どうしてイチョウまでが知っているのか。
銀杏づくりの作業に携わった者は、中さんと中さんの義弟、極くたまには奥さんも、私を含めて主要メンバーは3人だが、イチョウの実を直接触らないように常時ゴム手袋をしていたが、何かの拍子に素手で触ることもあって、3人3様に手に痒みを感じた。
ネットの記事から借用させてもらった。中さんのはこれ以上酷(ひど)かった。
この痒くなる成分は、ウルシやマンゴに含まれているのと同質のものだと、中さんが余りの痒さに皮膚科の診療所に行って、綺麗な女医さんから教わってきた。私は子どもの頃からウルシにはしょっちゅうやられていたのでさほど気にはしなかった。くれぐれも、マンゴに齧(かぶ)りつくときには慌てないで注意しましょう、と綺麗な女医さんからウインクをされながら、言われたとか。
20年ほど前のこと、初めて銀杏を作ろうとして果肉を素手でむいた。何も知らなかった。その時は、痒みは発生しなかったが、手のひらの皮が全部すっかりめくれた。
秘密を暴露しちゃおう~かな。実は今回、小用の際に大事なものを汚れた指でつまんで、先っぽが痒くなった。他人には言えぬこと、まして女医さんにはもってのほか、時間が経てば直ると信じて耐えた。
ところで、この「もってのほか」は「以っての外」と書くが、「思外」と書いたという説もあるらしい。
イチョウの木には雄の木と雌の木があるというのは、前の方で書いたが、種子としての銀杏にも雄雌があることを今回初めて知った。2面体が雄で、3面体が雌。銀杏の世界においてもメスは複雑で、オスは単純? そして生っている実の95~96%が雄で雌は3~4%の割合。雄の実からは雄の木が、雌の実からは雌の木が生える。木の外観や葉の形からは雌雄を見分けられない。
雌の銀杏
雄の銀杏
最後にどうしても触れておかなくてはならないことがある。命に関わる問題でもあるのだ。食べ過ぎに注意すること、特に小児には気をつかって欲しい。個人差はあるが、5~6個食っただけでも中毒を起こす人もいるらしいのだ、天の恵み、中さんの努力に感謝しながら慎重に食しましょう。
頑張って集めた銀杏を日頃お世話になっている人たちにお歳暮にして、差し上げようと考えていたのだが、誰かに、時間が経つと殻の中の食べる部分が萎(しな)びてきますよと教えられ、それならば、できるだけ早く食べてもらった方がいいのではと思って、予定変更。
希望者には喜んで差し上げますから、声を掛けてください。銀杏食って元気! 元気! 但し、数に限りがありますサカイにご了承ください。