自民党の新総裁に選ばれてからの安倍晋三の言動は、いささかハシャギ過ぎの感ありだ。衆院選を前にその危険度は増している。危ないと心配し、怖いと感じるのは私だけではない筈だ。
日銀法を改正して、政府が日銀の機能に深く関与(連携)できる仕組みを作って、物価の上昇が目標数値に達するまでは、無制限に大胆な金融緩和を誘導すると発言した。どこの国においても中央銀行の独立性は重視され、政府が深く関わるのは主要国では中国だけだ。
「物価上昇率を2~3%を目標」にすると言ったが、公約では2%に下げた。「建設国債をできれば日銀で全部買ってもらいたい」との気違い染みた発言には、さすがに、党内からは慎重論ならぬ安倍心配論が飛び出し、石破幹事長は火消しに躍起。
そして、憲法を改正して、集団自衛権を行使できるようにする。自衛隊を国防軍として位置づけるという右派的主張。予算の支出抑制策が図られないまま、防災の名の下に展開しようとしている公共投資、国土強靭化推進。消費増税でもまだ足りないと言われているのに、先ずは金をばら撒きたいらしい。財政の悪化が一段と厳しくなるのは必至、国民に負担の分かち合いを求めざるを得ない状況にありながら、策の一手は「生活保護の給付水準の10%引き下げ」のみだ。
こんなに威勢よくハシャギ過ぎる安倍晋三自民党総裁が怖い。
そして、他にも怖い奴が二人居る。日本維新の会の代表・石原慎太郎(前東京都知事)と代表代行・橋下徹(現大阪市長)の両氏だ。
そんなに怖い二人のうちの一人、石原慎太郎氏のことを20121123の日経新聞・春秋氏は捉えて記事にした。もっともだと思うので、ここにマイファイルさせてもらう。石原氏は自ら自分のことを、暴走老人なんていっているが、正に暴走中だ。危ない老人だ。
橋下氏の怖いことについては、あらためて取り上げたい。この男も可笑しい。
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20121123
日経新聞・朝刊
春秋
石原慎太郎さんは「言葉の人」だ。それも自らの思想信条をほとばしる言葉にまかせて口に出すから、東京都知事をやっていたこの13年余りにも物議をかもしたこと数限りない。「三国人」発言や「ババア」発言に眉をひそめていた世間も、やがて受け流すようになった。
「まあ、シンタローだからねえ」。石原さんにだけ許される、こんな不思議な空気ができあがったわけだ。ご本人もこんど国政政党の党首になったというのに、この環境をフル活用したいらしい。「日本も核保有のシュミレーションをすればいい」とか「日本は米国の妾(めかけ)で甘んじてきた」とか、やっぱりの暴走ぶりである。
こういう発言を「歯に衣(きぬ)着せぬ物言い」などと持ち上げる風潮がある。周辺国の圧力が増すなかで、溜飲が下がると喜ぶ人もいる。しかし考えてみれば、もう「シンタローだからねえ」では済まないはずだ。衆院選の結果によっては総理に担がれる可能性さえある政治家の、かくも激越なる言葉を黙過するのはむずかしい。
言葉をほとばしらせてやまぬ人といえば、石原さんを日本維新の会の代表に迎えた橋下徹さんを忘れてはなるまい。野合批判の絶えぬ合併劇だが、石原節炸裂のさまを見れば橋下さんの狙いもわかる。今後は自らの言葉との激情二重奏を聞かせたいのだろう。耳を塞がず熱狂もせず、その響きをじっくり反芻するとしよう。