30余年前、友人に話して笑われたことがある。
37年前に神奈川県大磯町にある電鉄系ホテルのプール部門で働いていた。学校を卒業して入った会社の新入社員研修を終えて、初めて赴任した事業所だった。
職場は海岸に面していたので、暇があれば砂浜を歩いた。釣りをしている人、犬の散歩を楽しんでいる人がいた。そこで、見つけたのが海底ケーブルの末端部分が、大磯寄りの二宮の海岸にあったことだ。太平洋海底ケーブルとあるから、きっとアメリカに繋(つな)がっているんだろうと察した、が、それが電線?を束ねたケーブルで、はるかに遠いアメリカと繋(つな)がれているなんて、当時は信じられなかった。
それから、移籍を命じられて、横浜の中心部で不動産業に携わることになった。そこで、知り合った友人に何かの機会に、二宮からアメリカまで海底ケーブルで繋がっているんだよ、電線で、と言うと、友人はそんなことないだろう、ラジオだってテレビだって、電波で伝わっているんだよ、アメリカまで電線が張られているなんて、嘘だ、とムベもない。そして、笑われたのだった。
でも、電話は電信柱から電線で引か込まれているよね、と私。
戸塚の深谷や瀬谷の自衛隊の通信基地は、電波をチェックしているんだよ。恰(あたか)も、私が、とんでもないトンチンカンな人間だと言わんばかりに。これが、30余年前に、私が話しかけて、鼻の先で笑われた内容だ。
そして、朝日新聞(20120226)1面、”カオスの深淵”のコーナーで、房総半島で、シンガポールと日本を最短ルート(6千キロ)で結ぶ光通信ケーブルの敷設する工事の紹介記事があった。これが、現在の姿だ。
朝日新聞20120226 シンガポールと日本を結ぶ光通信ケーブルが敷設されている=1月26日、房総半島沖、本社ヘリから、恒成利幸撮影
今は、光ファイバーの時代なのだ。
6千キロ間を、情報は1千分の60秒で行き来する。このプロジェクトは1千分の5秒を短縮するために360億円を投じるという。
すげえなあ、と感心しながら、記事を読み進めた。0、1秒程度というまばたきよりずっと小さい時間短縮への巨額の投資に、どんな意味があるのか。事業主のNTTの担当者に聞くと「使うのは主に投資系の金融機関。いまは1千分の1秒の情報遅れで、数百万ドル損することもある。一瞬でも速める意味は大きい」と、記事にあった。
日本と外国に繋がる送信網を調べてみたら、下の図面通りだ。
ちなみに、この二宮からグアム経由でサンフランシスコに通じる9850キロの海底ケーブルは1964年5月15日に開通して、即時通話が可能になった。東京オリンピックが開催された年だ。最初に話したのは、時の総理大臣池田勇人とジョンソン米大統領だった。
当時のケーブルは一本ものではなく、150キロごとに中継器を設置した。電話換算では、128回線分だった。
それじゃ、それまでの通信手段はどうしていたのだろう。
そして、話は別の繋がるに、つ・な・が・る。
今日20120311の日経新聞・朝刊で、通信会社ののソフトバンクがモンゴルで風力発電の事業を始めるとの記事を読んだ。ソフトバンクが中国企業に技術協力して発電、韓国の企業が送電を担い、モンゴル、中国、韓国、アジア諸国に海底送電網を敷設、送電するという「アジアスーパーグリッド構想」だ。これまた、繋げる。人間は何処までも繋がりを求めるようだ。
ところで、そんな重要な役目を背負ったケーブルが海底に張り巡らされていて、底引き網漁などで損壊したりしないのかと、ネット情報を調べていたら、案の定、やはり船の碇((いかり)や漁業活動で事故はあるらしい。